【酒造り興味ある人必見】蔵人1年目が感じた酒造りの魅力3選

日本酒を知る

各蔵が、甑倒し(今期の酒造りで使う最後のお米を蒸し、仕込み終わること)や、皆造(仕込んだ全ての醪を搾り終わること)で蔵の人々を労うお祝い行事が行われるこの季節。

筆者が勤務する蔵も今日、皆造祝いがありました。

甑倒ししてから皆造までの間は、順々に搾るタイミングを見計らって終盤に仕込んだ醪を搾ったり、甑倒ししたことで今期もう使わない道具を入念に洗って片付けを行っていました。皆造後も、タンク洗いや圧搾機の片付けなど、まだまだすることがあるこの頃。

長いようで…やっぱり長かったと思う約7ヶ月の酒造り。「酒造りを学びたい!」という一心で、畑違いの業界から酒造りの世界に飛び込んでみた筆者ですが、大変なことはありつつも、酒造りの魅力を再認識できたこの半年間は本当に貴重な時間でした。

本記事では、そんな現場で感じた酒造りの魅力を3お話しいたします。

この記事を通して、少しでもご飯のお供の選択肢に日本酒を入れていただいたり、日本酒について興味をお持ちいただければ幸いです。

自然の力の組み合わせで作られていく過程に介入できる

人間の介入方法の数だけ、数多の日本酒が存在する

他の記事でも触れた通り、日本酒は米、水、麹だけで醸されるお酒です。

麹カビが米に付着して育った麹が、米からタンパク質と糖質を引き出し、酵母がそれらを栄養分としてアルコールや独自の味わい・香りに変え、日本酒が造られます。

特に今期の酒造りでは、伝統的な酒母造りである「山廃仕込み」が、日本酒は自然界が織りなす生産物だということを意識させられました。

山廃仕込みは、自然の力で酒母中に乳酸を生成させ、最終的に原料から混入する野生酵母を淘汰しつつ、優良酵母を多量に培養していく酛造りの1つです。そしてこの過程には、仕込み水や空気中に含まれる、化合物や菌が順々に増えてはバトンタッチして淘汰され、最終的に良い酵母が含まれた酒母ができていく面白さがありました。

しかし、いくら「自然の力」といえど、ある程度人間の力添えがないと、日本酒はできません。

適切な湿度・温度管理をしないと良い麹にはなりません。山廃酛も、各工程の最適な温度と、仕込み環境がなければ、酒母はできません。さらに元を辿ると、洗米時の米の吸水率も徹底しないと、理想とする酒の味わいから遠のいてしまいます。

つまり、自然によってのびのびと酒が造られていく縁の下で、コミュニケーションを取るように人間が援助する形で介入する必要があります。そして、その介入方法の数だけ、数多の日本酒が存在す。

時々、101点以上の味わいが偶発する

最近、西堀酒造・西堀哲也さんのブログが面白くて拝読しているのですが、そのブログで書かれていた、「酒造りのような、因果関係が完全に特定不能な世界では、思いもよらぬ110点の世界が現れる場合がある」という”自然の気まぐれ”というものを私も最近日本酒に感じました。

私の蔵では今年、焼酎に使う白麹を使用した酒造りに挑戦しました(日本酒は一般的に黄麹を使用)。

白麹はクエン酸を多く生成するので、白麹単体の味がかなり酸っぱいです。仲・留麹を白麹に当てたため、黄麹よりも白麹の影響が強く反映された醪でした。上槽して垂れつぼに出てきた味を唎くと、飲むには酸っぱくて、かなり不安でした。(飲めないほどの腐敗した酸っぱさではなく、綺麗な酸っぱさではありました。)

しかし、数週間経った今日再び唎酒すると、白麹由来のクエン酸ならではで白ワインような、角がとれたお酒になっていました。以前試飲した味からは想像できないくらい、良いものになっていました。

理想的な味わいを求めるために設計図を作りますが、一時上手くいかないかもと思いきや、時間が経って予想以上の味わいが突然できたりするのです。今年の米の質や水質の影響等なのでしょうか、そんな自然の気まぐれの面白さを身に染みて感じることができる酒造りはとても奥深い仕事だと思います。

西堀酒造・西堀哲也さんの参考ブログ記事はこちら

健康的になる

朝5時に起床、米を蒸す準備と準備体操を終えたら、早朝から30℃の麹室に入り、皆で「盛り」の作業をします。麹室から外に出てきた時にはもう汗だく。日中、夜中も含めほぼ毎日サウナに行っているかのように大量の汗をかきます。また、力仕事の世界ですので、1袋30kgのお米を手でいくつも運んだり、長〜いホースを担いだり、圧搾機の設置など、腰痛になることもしばしば。

ですので、蔵入りしたての頃は仕事終わりはバタンキュー。20時頃には就寝していました。しかし、人間の適応能力はすごいもので、次第に重いものを持つ時の体の使い方を無意識的にわかり始め、徐々に腰痛に困らずに重いものを持ち運ぶことができてきました。また、肌も毎日汗をかくため、長年ニキビ肌に悩んでいた筆者ですが、酒造りの半年間1度もニキビができず、肌の調子が今でも良好です。

運動不足になりがちな現代社会。肌のトラブルが少なくなることも考えると、女性にはとても嬉しいかも…!?笑(※個人差あります)

日々の酒造りの一日スケジュールについての記事はこちら

日本をまた好きになる

日本酒の味や香りの要因は複合的であり、その元の起因要素も酒蔵を包囲する地形、文化、造り手によっても随分変わります。酒造りは冬に寒冷の地域でする方が望ましいと一般的に言われていますが、関東圏や九州など割と温暖な地域でも、その地域の気候に適応した酒造りを行なっているのです。

また、「灘の男酒、伏見の女酒」と言われるように、「山地」と「丘陵」を約73%占める日本の地質から生み出された、各地域に流れる様々な水の硬度が酒質に違いをもたらします。酒米も同じで、長い間ご飯米として愛されてきたその県ならではのお米をそのまま酒米として用いたり、新たに酒米として米質の品種改良が進められたりと、県独自の特徴が至る所で発見することができます。

日本酒は、全ての日本の魅力がギュッと凝縮された一つの伝統工芸と感じます。どこかの蔵の味わいに寄せるように頑張るのではなく、それぞれの酒蔵の周りにある恵まれた自然を表現するように、素敵な銘柄をのせて全ての蔵がオンリーワンの味わいを醸しています。

その中のごく小さな一部として関わることができる酒造りは、日本を好きでい続けられる筆者の理由の一つとなっています。

いかがでしたでしょうか。

まだまだ筆者から見える日本酒の世界は狭く、拙い点ばかりですが、新米蔵人の一人としてこの意見が参考になりましたら幸いです

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